おやおや、ちゃんとお掃除もしないで・・・、というわけじゃない。
ここは可愛いレストラン。南フランス、カンヌ旧市街の坂の途中にある。
街はこれから日が暮れて、通りは大勢の人たちが椅子を並べ、遅くまでワインを飲み交わす喧騒に包まれる。
長い夕食が始まる、その直前のワン・シーンだ。
わざと花びらを散らすなんて、フランス人にもそんな感性があったとは・・・。
というのは、4年前にパークハイヤット・パリ・バンドームでジュエリーと展示会をした時、紅葉した楓を大きな鉢にバサッと入れ、その下に色とりどりの葉を落として飾ったことがあった。
ところが、他の場所の活けこみをしている間にボーイさんが気を利かせて、すべて掃き清めてしまったのだ。
慌てて、「ちがうちがう、このままにして」と言ったものだ。
だから、人をお招きする折りに、露地をきれいに掃除した後、落ち葉をわざと散らして風情を出す・・・というようなことは日本ならではの風景と思っていた。
赤い籐の椅子と黒い床に、赤い花びらが散って、色彩の感覚はいかにも南仏っぽい。ざっくりとラフな感じもリゾートを感じさせる。
「もののあわれ」ではないけれど、おしゃれなことはさすがにフランスだ。