パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

香水とオードトワレの違い ④ 発売ライン

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Q.最近はオー・ド・トワレなどが目について、香水(パルファン)があまり売られていないようですが?

A.通常、香水類を発売するときには、先に商品ラインを決めます。

 

 

商品ラインを決めるということは、香水(パルファン)、オードトワレ、オーデコロン、ソープ、ボディクリーム、パウダー、練香水など、同じ香りのシリーズでどれを出すか、ということです。決まりはありませんが、香水を中心に、トワレとソープ、パウダーなど3-4品を出したりすることがよくありました。

しかし、昔はまず、香水のために処方を書きましたが、最近では初めからトワレしか作らないというケースも増えてきました。

香水は濃く、重くコンサバであるいう印象からか、今の時代に合わず流行らないと思われているからかもしれません。また、量の割に高すぎる、というのもあるでしょう。

 

昔は合成香料の数が少なく、場合によっては天然香料の方が安いものもありました。ですから、今よりもっと天然香料を使い、その特徴を生かした香りが作られていました。例えばローズやジャスミン、オレンジフラワーなどをたくさん使った、ゴージャスでボリュームのある香りです。

また、使う人たちも、香水は贅沢な特別なものという意識があったようです。

 

しかし、今はもっと若い人がカジュアルにつけるシーンが増えました。値段も買いやすく、量もたくさん使います。ボリュームがあり、複雑な昔風の香りは今の若い人には少し古臭く感じられるでしょう。

最近よく売られている透明感のある軽いミュゲ(すずらん)系や、爽やかなグリーンフルーティ、甘いグルマン系などは、その骨格をほとんど天然物に依存しません。むしろ、天然物を入れると香りが重く、濁ってくるのでその使用は最小限に控えるか、全く入っていないものもたくさんあります。2000年以降は特に顕著になってきました。

 

昔の香水のように、最初の処方中の天然香料を、安価な合成香料に置き換えてオードトワレなどに落としていたのが、最近のように、もともと合成が主になっているのなら、香水とオードトワレとの差は濃度だけになります。

こういったタイプ、香調のものでは、香水を出す意味が薄れてきたといえるでしょう。

 

また、香料の規制も年々厳しくなってきて、以前の処方のまま製造することが難しくなってきました。ワシントン条約、アレルギー、環境に対する影響の問題などがあります。

わずか10万分の1の素材を変えるだけで劇的に変わる香水類では、メガヒットしたヒストリーパフュームは別として、永続的に発売し続けるために、処方の組み換えと材料の調達をするには大変なエネルギーを必要とします。

そこで最近の多くの新しい香水類は、その年限定や、数量限定で売り切ってしまうほうがコストに合うと考えられ、長く育てていくということがされなくなっています。香水(パルファン)が売れにくくなっていることもあって、トワレかコロン、ひとつのアイテムだけを出すことが多くなってきているのです。

 

ひとつのことを説明するためには、それに関するいろいろな前情報も必要で、ケースによっての違いなども考慮しなければなりません。読み手の知識の深さにかかわらず、だれが読んでも間違いでないように書こうと心がけていますが、いつもとても苦労します。

誤解のないようにつけくわえれば、天然香料がよくて、合成香料が悪い、ということではありません。それについてはまた別の項でゆっくりと・・。

 

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