パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

シキミ② 樒 Japanese star anise/Illicium anisatum

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春と秋の彼岸と、父の命日、お盆。年に4回は墓参にくる。そのお寺で二年前に発見したのが「シキミ(樒)」。春に行けば花が、秋に行けば実が見れる。この写真はまだ木についている、緑色のぷっくり丸い、シキミの実。
 
シキミの別名は「ジャパニーズ・スターアニス」。
しかしこのシキミの実は、中華料理でよく使う「スターアニス八角)」とは似て非なるもの。毒性があり食用にならないと図鑑に書いてある。
 
実際に、誤って食べて中毒を起こし、死亡した例があるそうだ。
 
 
 
しかし、食品売り場でいつも目にする乾燥したスターアニスは、茶色くて星形に尖っているので、見た目を間違えようがない。「全然似ていないなー」と思っていた。
 
 
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ところが、今年もまた母の手を引いて足元を見ながら歩いていると、緑の実に混ざって、コロコロと茶色い実が落ちているのを発見。あれ?乾燥したシキミかな?
 
 
お寺の細い道は飛び石のようになっておりつまずきやすい。とりあえず舗装されたところまで一緒に行って母の手を放し、「ちょっと行ってくるね」と種子を拾いにお墓のそばに引き返した。
 
 
なるほどなるほど、乾燥するとこんな感じになるのね。確かに似てる。。。
 
 
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木へんに密と書いて「樒(シキミ)」。
 
「密」という字には、閉ざされて内部がわからない、人に知られない、ひそか。または、すきまがない。ぴったりとくっついているという意味がある。
 
それがこの「樒」に関係あるかどうかは知らない。
 
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乾燥になりかけ中。なんだか鬼がくしゃみしたみたい。
 
 
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こちらのシキミは、実の中から種子が爆(は)ぜそうな状態である。
 
 
実をいくつかアトリエに持って帰り、ショップの机で写真を撮った後、そのまま放置し他のことをしていると、「コン、コン、コ、コココ、、、、」と、ラボのほうで何かが落ちて弾(はず)む音がする。
 
「なんだろう?」とスタッフと顔を見合わせてラボに行ってみると。。。
 
 
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ラボの床の上に落ちていたのは、つやつやした丸いもの。
 
それは緑の実(さや?)から飛び出したシキミの種子だった。なんと、ショップから距離は5メートル以上は飛んだものとみえる。乾燥とともに外殻が縮み、内部と外部の圧力の差によって発射するのだろうか、などと推測してみた。自分の力でできるだけ種子を遠くへ飛ばし、子孫を増やしていく知恵なのかな。
 
ふっくらと丸っこかった緑の実は、中の種子が無くなったらしぼんで乾燥する。そして茶色く細くとがった星の形になるというわけだ。
 
 
 
乾燥した実には匂いがある。確かに、わずかに甘くアロマティークでアニス様であるが、八角に比べて香りは弱い。種類が違うせいなのか、乾燥が進むともっと匂いが強くなるのか、それはもう少し経時変化を見たいと思う。
 
ちなみに、黄色い「シキミの花」はジャスミンからアニマリックな部分を抜いて、クリーミー感をもっとさっぱりとさせたような、大変上品な香りである。
 
 
 
 
知っている人には、当たり前のことなのだろうけど、自分で疑問を持ち、それを見つけて体験したということがちょっと自慢である。
 
 
 
 
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