この花の名前が「オオイヌノフグリ」というのは、結実した種子の形が犬のふぐりに似ているからだという。
しかし、その実を見たことがないのは不思議だ。
春になり、凍えた地面がやがて柔らかい緑でおおわれるころ、青い可憐な花がぱっちりと咲く。
花はごく小さいのに思いのほか目立ち、春のウキウキ感と重なって印象深い花だ。
子供のころは、学校帰りの道草の途中で、まだ舗装されていない道の、しかし人が踏みしめることのない両脇に点々と咲いているのを、しゃがんでつくづくと眺めたのを覚えている。
「オオイヌノフグリ」という名前も知っていたが、ふぐりが陰嚢のことだと知ったのはもう少し大きくなってからだ。
いかにもひどい命名だとは思ったが、本当に種子がそのような形なのかは、今になっても確かめたことがない。
愛らしい花に比べて、実はとても目立たないのか。
もしくは種子ができる頃はきっと、もっと背の高い草に追い越され、初夏の訪れにいつしか存在を忘れてしまうからかもしれない。
先駆けというものは、人の心に喜びをもたらすものではあるが、そのようなものである。
☆香水専門ウェブサイト「FRAGRANTICA(フレグランチカ)」にパルファンサトリの「さくら」がフォーカスされました。