つくし、土筆、つくしんぼ。
つくしはいわばスギナの花のようなもの。
ふさふさとした緑のスギナと地下茎でつながっていて、スギナの胞子を飛ばすために伸びた茎である。
==== 上はまだ、傘の開く前のツクシ。
下の方からだんだんと開いていく。
佐保姫の筆かとぞみるつくづくし雪かきわくる春のけしきは 藤原為家
佐保姫は春の女神のこと、そしてつくし(土筆)を佐保姫の筆に見立てている。
野山に積もった雪をかきわける(書きと雪掻き)と、春がやってくるのである。
小さい頃によく取って遊んだつくしも、空き地や原っぱがなくなって、本当にお目にかからなくなってしまった。
若い頃、造園業の人に「庭につくしを植えてもらいたい」と言ったら、「スギナは雑草で駆除が大変なのに、土筆を植えたいなんて都会の人は変わっているね」と笑われてしまった。
つくしは地味ながら、春を喜ぶ山野草として歌や画の題材にもよく登場する。
愛嬌のある姿も魅力的だ。
英語にはつくし、土筆そのものを指す言葉がない。
こういう鄙びたものを愛でるところが、季節情緒であり、日本的である。