パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

遠来のお客様 from south france ③Gouldon グルドン

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グルドンの香りのお店。
ウインドウにあるかわいい赤ちゃんの靴が気になる。

 

食べ物に賞味期限があるように、話のネタにも(自分の中での)消費期限がある。未公開の記事の卵はいくつも用意しておくのだが、忙しさに紛れ、あるいは新しい書きたいことが重なってしまい、書く時機を逸していくつ無駄にした原稿があることか・・・。

帰国から早2週間、すでに気持ちが次に移ってしまったような気もするのだが、「あの先はどうなる?」 「次が読みたい」と言う奇特な御仁もおられることがわかったので、大したことではないのだがもう少し続きを書いてみようと思う。

 

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オルガさんはネットでキンモクセイの香水を探していて、「ベースノート(base note)」という香水専門 サイトからパルファンサトリにたどり着いたという。

地球の反対側から極東のニッチなブランドを知ることができる。
ネットの力ってすごい。20年前・・・、10年前でも考えられないと思う。

 

彼女はちょうど転職したばかり、旦那さんと一緒にバカンスをとることができなかったそうだ。
こういうわけで一人で日本にバカンスに来た彼は、フランスのオルガさんのもとに「ソネット」を持って帰ったのである。

 

初対面にもかかわらず、昔からの親しい友達のような「気」を感じたのは、彼女が私の香りと先に会っていたからかもしれない。

 

そして彼が私の店に来てから、私のグラース行きがわずか2週間後だったから、この日が実現したように思う。
もし3か月も半年も後だったら?会えていたかどうかわからない。

 

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コートダジュールからプロヴァンスにかけて、山の頂上や崖にへばりつくように「鷲巣村」と呼ばれる村が点在している。。

以前も鷲巣村の「サンポールデュバンス」や、「ムージャン」に行ったことがあるが、どこも石造りの中世の趣(おもむき)を持っていた。
一番高いところにはたいがい教会があり、そこを中心に建物が取り巻いている。

厳しい環境において人は信仰をよりどころにする。
たぶんどこの国でも同じように。

 

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ただ見るだけなら小一時間もあればまわれてしまうような小さな村。
路地は入り組んで、建物と建物の間には猫道のような細い隙間もあったりする。

今は観光地としてお土産屋さんが軒を並べるが、村全体の構造を見れば要塞のようである。
度重なる異民族からの侵略を避けて、戦いやすい山の上を住処に選んだのだそうだ。

 

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もともと観光を目的に来るわけではないので、いつも南仏についてから現地の人のお勧めや思い付きで訪れる村々や名所。

そのときはただ初めての場所にワクワクし、好奇心でいっぱいなだけであったが、点が線になりだんだんと面になり、地理や歴史も理解してきたように思う。(まだ浅い知識では違っているかも知れないが、前よりは・・・)

小さい頃から予習や復習といった計画的勉強は苦手、むしろ道草をくいながら見たり触れたりしたものばかりが今の役に立っている。

親は何のために高い教育費を払っていたのか・・・。

 

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手前はおそらくロシアンセージ、その向こうに黄色いジュネの畑。
山の稜線からこちらに向かってもやが下りてくる。

カンヌ方面から道を上がってくるときはここは山の頂きに見えたけれども、その向こうにはさらに高い山々が連なっているのだった。

昔、商人たちがこういった村を中継地としてアルプスを越えていったという話を思い出す。


「このあたりにはまだまだ小さな村がありますよ、もっとたくさんいきましょうか?」

グルドンの駐車場に戻りながら彼女はそう言ってくれたのだけど、次の村でゆっくり食事をとっておしゃべりをすることにした。

そこで旦那さんとも合流するという。
2週間ぶりの再会だ。

 

本当に感じることがたくさんあったのだ。
思い出しながらそのモードになるのはちょっと時間がかかる。
だから話が前後してしまうかもしれないが・・・。

 

つづく

 

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