パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

香水ブランドができるまで① 香料の調達① fragrance raw material

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香料の調達① fragrance raw material

前回、私の調香オルガン台のことを書いてから、早くも1週間が過ぎてしまった。何から書いていいのか、話がひろがっていくのでとても難しいけれど。

 
調香オルガン台を作ったとしても、その上に並べるボトルと、その中身の香料はどうやって調達するか。
それはそれは、本当に苦労した。
 
 
香りのオルガン台に香料が無かったら、鍵盤のないオルガンと同じ。
もしくは、絃(げん)のないピアノかも。
 
 
もちろん、こだわりうんぬんは別として、料理人なら、肉も野菜も市場へ行って買うことができる。
画家なら、画材屋さんへ行って絵具を買うこともできるだろう。
 
 
しかし香料は、一般にはどこにも売っていないのだ。
 
 
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香料の原液が買えるとしたら、せいぜい、雑貨コーナーにあるエッセンシャルオイル
いまでこそ、数十種類そろえているアロマのお店もあるだろうけれど、当時はそれすら、まだそれほど多くなかった。
 
 
調香で使う香料は、天然香料は100種類ほど、単品香料だけで最低200種類は欲しいところだ。
香料会社なら同等品の産地違いやメーカー違いなど延べていくと、軽く1000や2000は持っている。
(今はどこも減らす方向に向かっているが)
 
で、単品香料は売ってくれないだけでなく、仮に購入できたとしても、最低1kgとか、一斗缶(18kg)とかで流通しているのがふつう。
 
それを300種類も揃えるとなったら、倉庫がいっぱいになってしまう。
 
そこで、ほんの少しでも売ってもらえるところはないかしら、と、分厚い電話帳を片手に(そのころはネットで調べるというような時代ではなかった)香料会社をピックアップして、端から電話をしてみた。
 
 
近いところから順番に、200社くらいかけたのではないかと思う。
 
当然なことだが、量が小さくて種類の多い注文は、香料を詰める時間や、ラベルを打ちだし貼ったり
伝票をおこしたりと、手間ばかりかかって割に合わない。
サンプルだったら出せるけど、売るのは面倒、というのが普通だ。
 
やっぱりというか、ほとんどが門前払いの中、2社くらいがファックスでリストと見積もりを出してくれた。
しかし、10gあれば十分な香料でも、最低ロットが1kgからであったし、種類は20種類くらいしかない。
 
つまり、50ml入りの香水瓶の中に、わずか0.001gしか入れないような香料でも、なければその香りにならない。
 
そんな香料を1kg買ったら、100万本も作れてしまう。
ざっくり説明すると、そういうことである。
 
 
 
もう少し電話をしてみると、ようやく1社、埼玉にある小さな香料会社が100gでも売ってくれるというので、早速会いに出かけてみた。
 
そこに行ったときのことはよく覚えている。
 
 
ラボと工場と倉庫が一緒になって、体育館のように広い。
調香師が二人もいて、もうひとりアシスタントパフューマーがいて、あとはコンパウンダーさんと経理事務の人という小さな香料会社である。
 
 
本当にひとつの話をするために、その前の説明をしなくてはならず、どんどん話がそれていくような感じ・・・。
 
つづく。
 
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