パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

香水ブランドができるまで 香料の調達② fragrance raw material

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香料の調達② fragrance raw material

ある明るい秋の日だったと思う。

 
少量で販売してくれるという、ありがたい奇特なその香料会社を訪れてみた。
都心から電車に乗って1時間ちょっとのところである。
 
駅から15分ほど、駅前のまっすぐ伸びた道路を歩いたところに、その会社はあった。
正面はガラス張りで、明け放したドアから、強い香りが漂っている。
玄関の横には段ボールが積んであったりして。
 
 
声をかけて中に入ると、思いのほか若いパフューマーが社長さんで、気さくな感じ。
中を案内してもらうと、広い倉庫の中を大きく二つに仕切って、半分はラボ兼事務所、半分が香料保管室件工場、みたい。
 
のんびりした雰囲気の中、お年を召したパフューマーと若い女性アシスタントパフューマーが働いている。
 
 
 
 
思い起こせば16年前・・・最初に香料を発注したのは9月だった。
予算の関係もあるので、初回注文は汎用品を中心に、100グラムづつ30種類の香料を買った。
 
翌月は20本、さらに翌月10本、また10本と、少しづつ香料を買い足していった。
 
このたび記事を書くために、当時の発注書を探して読みかえしてみた。
 
一度には買えないので優先順位を決めて、増やしたり削ったりした痕跡が感じられる。
 
 
「こんな香料を買うのに苦労していたのか」
「あー、だいたい月の予算がこれくらいだったんだなー」
と、あまりにいじましいというか、いじらしい買い方で、思わず涙した。。。
 
というのは大げさであるが、「苦労したんだねえ」とほめてやりたい気分である。
そんな風に売ってくれた香料会社さんにもとても感謝している。
 
なにしろ、香料なしでは、「陸に上がった河童」というか、(ちょっと違うかな?)手も足も出ないでしょ。
 
 
 
まあ、そんな風にして注文したり通ったりしているうちに、ありがたいことに、
「大沢さん、オルガンが一つ空いているから、自分で充填するなら小分け量は半額でいいよ」
と言われ、
 
「渡りに船」とばかりに、自前のボトルと電子メトラーを持ち込んで、充填し、ラベルを張り、
最後に社長さんに検品してもらって、伝票を置いて帰るようになった。
 
そのうち、10gでも20gでも好きな量だけ買えるようにもなった。
 
量が少なければ、保管場所も小さくて済むということだから、割高になってもそのほうが良いのである。
 
 
そこのオルガンは、コの字型の直角なもので、どちらかというとジャンカール先生のオルガンに近い。
 
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そしてなぜ自前の電子メトラーまで持って行ったかというと、そのオルガンに備え付けられていたのは、アナログな天秤だったのである。(天秤についても、いつか書きたいことが満載だが、ここは後に譲るとして)
 
 
月に一回くらい通っていただろうか。
そこで、たまたま出会った方がきっかけで、初めての大きな仕事を得ることができたのである。
 
 
つづく
 
 
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