パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

カワセミとギャラリー 翡翠 Alcedo atthis

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この日の朝、新宿御苑に出かけた。
『久しぶりなのであちこちパトロールしなければ♪』
とまずは母子森に足を運ぶ。
 
細いせせらぎ沿いに歩き、藪を一歩抜けると、黒っぽい集団が遠く池の対岸にひとかたまりになっているのが見えた。
 
離れていても、こちらに向かってみんなが構えているのは大きななカメラだというのが、朝日に光ってわかる。
 
「うわ・・・」
 
と足が止まる。5秒くらいそのまま固まった後、そっと巻き戻しのようにまたもと来た道を後ずさりする。おそらく、ちょうど私と集団の間に、何か素敵な被写体が訪れているのだろう。
 
 
そんなところに乱入して獲物(えもの)を逃がしては、皆さんの顰蹙(ひんしゅく)をかってしまう。というか、寒い中、早朝から待っている方々のお邪魔をするのはやっぱり気が引けるから。
 
 
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そして、池を逆周りに、築山(つきやま)の方から小路をまわってギャラリーへと、後ろから近づいてみる。
 
『何かな...鷺(さぎ)だったらこんなに集まらないよね...』
 
そう思って静かにしのびより、木の間がくれに水辺を見ると、美しいカワセミが一羽。
本当に翡翠(ひすい)色の鮮やかな宝石のよう。
 
 
みんなが息を潜めて、しかし熱く取り巻いているのを見ると、まるでアイドルを囲むカメラ小僧のようである。
 
だれひとりしわぶきもせず、シーンとしているのが緊張感がある。
たぶん、このキレイな小鳥が、朝にここに来るのを待ち伏せていたのだろう。
 
 
 
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カワセミ様は、5メーターくらい先の橋の上に止まっていた、本当に長いことじっとしているので不思議なくらいだ。ギャラリーに見られているのを意識しているのだろうか。
 
人形のように思えるが、時折首をかしげるしぐさでホンモノとわかる。
でも、私の一眼カメラは望遠ではないので、本当にちっちゃくしか取れなかった。
 
 
シャッター音は聞こえない。飛ぶ瞬間を待ってるのかな?
 
みんなの邪魔しないうちに行こう・・・。一瞬のきらめきを脳裏に、足取りも明るく立ち去る私であった。
 
 
 
 
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