道には昨日の雪がまだ残っている。
ぞうりでは心もとないと思い、下駄をはいていくことにした。
家を出るとよく晴れて、思ったよりは暖かい。
先に見えるのは桜のようだ。冬に咲く、十月桜かと思う。
15日、遠州流のたて初め(初釜)に伺わせていただいた。
一昨年は先代のお家元が身罷 われ、昨年はしっとりとしめやかだったが、今年は明けて少し華やぎのある明るいお式であった。
お道具は毎年違う趣向でそろえられ、眼福である。
お家元初削りのお茶尺は、今年の勅題「立」にちなんで、春の光に湯気が立ちのぼる様子を詠まれた歌が添えられ、また、古瀬戸の大肩衝「春霞」という銘の茶入れも、柔らかく堂々としている。
前日の雪が残る寒さの中、春の陽を想い気持ちがほっこりとする。
すっかり日が暮れてしまった。
前日の残雪、風情のある不傳庵入口。