パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

ニュアージュローズができるまで① バラ色の雲

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南仏のバラ色の雲、ニュアージュローズという名の香水。2011年。

 

グラースは古い香料の街。カンヌにアパルトマンを借りて、グラースのラボへは車で20分の道のりである。 

南仏のさらっとした空気、明るい太陽。
朝と夕は、空いっぱいにピンクと紫が交互に広がる。

グラースで出逢う天然香料と、南仏の風景はいつもひらめきを与えてくれる。

 

すっきりとしたナチュラルなローズの香水は、今までも手掛けたことがある。

でもバラの存在は、私にとってちょっと特別だったし、バラの香料は気難しかったりもするので、自分の作品としてコレクションに入れることがなかなかできなかった。

 

人工的でなく、かつシンプルでもない。
複雑すぎず、丁寧に作った感じ。

バラとスミレとの組み合わせは特に新しいアイデアではないが、重くくどくならないようにしたいとずっと考えていた。

 

南仏の空に染まる優しい色の雲のような、そんな香りを作りたくて
処方をずっと組んだり崩したりした。

イリスは、ここでも使われた。

そして、スミレほど強くなく、粉っぽいミモザは、バラ色と紫の間をぼかすような、優しいトーンを与えてくれた。

このコンセプトを成立させるのは、絶対的に素材のよさが必要だ。
予算枠のあるパフューマーが見たら、
「こんなに贅沢に素材を使えるなんて」とうらやましく思うような香り。

軽く明るくするための、トップの部分がなかなか決まらなくて煮詰まってしまった時期もあったが、ようやく完成のめどがついたときはほっとした。

そこまでくれば、あとは99パーセントまで来た処方を微調整。
作業は一万分の1から十万分の1の香料を増やしたり減らしたり。
ここだけでも数十の試作がある。

もう、ひと色。
つかもうとしてなかなかつかめない、どこで良しとするかは、ちょっと油絵を画くのにも似ている。

 

今まで作った作品は、初めの発想から、着手して完成までの道のりが長く、どのプロセスもひとつづつ思い入れがある。

途中は辛かったりするし、世の中に出るまでは、我が子の将来を心配するように気がもめるものだ。

 

ようやく、送りだしてほっとした気持ちである。明日発売。

 

 

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