パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

NUIT de NOEL 1922年 キャロン ニュイ・ド・ノエル クリスマスの夜

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キャロン クリスマスの夜/CARON NUIT de Noel  1922 年

あの人も、この人も、そしてあなたは、どんな晩を迎えるのだろう。

ブラッククリスタルのボトルに金の帯、印籠をモチーフにタッセル(房飾り)の箱が美しい。

箱の素材は紙だが、柄は日本の鮫皮からとっている。

鮫皮は(エイの皮)、ワサビをおろす道具だけではなく、刀剣の装飾に使われた。江戸時代には、初めは刀の柄に巻かれていたのが、のちに鞘の装飾(兼保護)として使われるようになったもので、今見てもしぶくてなかなか粋な素材だ。日本でエイは採れなかったために高価な素材だった。

こういうパッケージやアートをみると、刀の美しさや漆蒔絵などの工芸品、日本の意匠が新鮮に映り、当時のヨーロッパで、盛んにデザインにとりいれられたのがよくわかる。

 

金のベルトは私は古代エジプトの鉢巻が由来だと思っていたが、当時の若者が額に巻いていた流行りの飾りから来ているという。。

 

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香りはオリエンタル。西洋から見たオリエンタルなので、和風とは言えない。暗く、重厚で甘いクラッシックな匂いだ。強いローズに、さらに強いアニマリックな素材をぶつけて強い芯を持つ官能的な香水。

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シャネル、ゲランなど、ブランドは自分自身の名前をつけることが多いが、創始者のエルネスト・ダルドルフはキャロン香水店という店を買って、その名を使いつづけた。名前から、出身を知られるのを避けたと言われている。

キャロン(ダルドロフ)もまたコティのように、調香師としてのトレーニングをしたわけではないが、芸術性の高い香水を出し、同時代に成功したブランドだ。ブルジョワ出身で、若いころ世界中を旅した経験が、彼のクリエイションの源泉である。

そしてキャロンはよく、コティと比べられ、語られるが、私はキャロンのデザインにより女性らしいロマンチズムを感じる。その背景に、ダルドロフの恋人、フェリシエ・ヴァンプイユの存在があると思う。

ヴァンプイユは、彼と協力して新しい香水のアイデアを次々と生み出した。このボトルパッケージデザインも彼女のものとされている。彼女もデザインの勉強をしたわけでもなかったが才能があった。

まあ、センスは感覚的なもので、教えたり教えられたりするものではない。
よい素材が適した環境にあって育つものだから。それが才能というものだ。

 

☆ 香水名      ニュイ・ド・ノエル(NUIT DE NOEL)

☆ 発売年      1922年

☆ 香調       オリエンタル  

☆ パフューマー   エルネスト・ダルドロフ

☆ ブランド      キャロン (CARON)

 

 

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