パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

舌切り雀 Tongue-Cut Sparrow

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「舌切り雀」は昔に繰り返し読んだ民話で、本の絵柄は今でも覚えている。

 

ちっちゃい頃、裁縫箱の横で遊びながら、母が糸切りハサミを使っているのをよく見たものだ。

そこへ兄がやってきて、
「うそをつくと、このはさみで舌を切られちゃうんだよ」っていうと、本当に怖かった。

それは、「地獄の閻魔さまに、やっとこで舌を抜かれる」話と混ざってたりした。


正しくは「おばあさんが井戸端に用意した糊を雀が食べてしまったから、おしおきに舌を切られてしまう」のが舌きり雀のストーリー。

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この話のキモは、ご飯つぶをを水で溶いた糊(のり)を使って障子を貼るシーンなので、障子のない現代の家で育った子供たちには、ちっともピンと来ないだろう。

 

かく言う私も、お話を読んでもらっていた当時は、昔の糊がご飯でできてるなんて考えていなかったので、スズメがなぜ糊なんかを食べたがるのか理解できなかったけれど。

 

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おばあさんが欲張って大きな葛籠(つづら)を担いで帰るシーンは特によく覚えている。
意地悪なおばあさんにはバチがあたり、優しいおじいさんはご褒美(ほうび)がもらえる。

シンプルな勧善懲悪もの。

 

しかし小判の入った小さな葛籠を持って先に帰ったいいおじいさんと、強欲なおばあさんが夫婦だったことには、当時はまったく思いが及ばなかった。

子供心にとっては、どうでもいいことだったのだろう。

 

こんなに価値観の違う夫婦が、年寄りになるまで一緒に入られるというのが、やっぱり昔話なんだな、と思うこのごろ。

 

 
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