パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

女帝エカテリーナ アンリトロワイヤ

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ロシアの女帝エカテリーナ アンリトロワイヤ。

 

また懐かしい本を見つけた。
2002年、箱根ガラスの森美術館で、女帝エカテリーナの愛用香水瓶の特別展示があり、その記念香水を作ってほしいという依頼を受けた時のことだ。

箱根に行ってその香水瓶を見せていただいた。一つの香水瓶が三つ又にわかれ、口が3つついている。三種類の香水が入れられるようになっている変わった形だった。

当然、その時代背景や人物を調べなければならない。あまり、彼女の文献がなく、小説の「女帝エカテリーナⅡ/アンリトロワイヤ」と、「エルミタージュとサンクト・ペテルブルグ/富田知佐子」を買った。そのあとで、池田理代子さんの漫画も読んだ。面白かった。

学生時代の歴史の知識では、夫を殺して女帝の座についたという、あまりよい印象の人ではなかった。が、本を読むと、目標設定の高い、努力と忍耐の人だということがわかる。学問を好み、愛に悩み、政治家としての決断に果敢に望む、一人の女性を魅力的に描いている。


もちろん、小説だからヒロインをよく書くのは当たり前だが、あれだけの偉業をするのには、やはり傑出した人物であることには違いない。



「エカテリーナⅡ 三つ口香水瓶の謎

なぜこれが三つ口香水瓶なのか・・・「朝・昼・晩の気分によってつけた」あるいは「愛する男性たち、それぞれのためにつけたのではないか」など、いくつかの解釈がありました。

美術館の展示会場には、三つ口香水瓶とともに、左右二つの香水瓶の中に残った香水の残滓を分析し、再現した香りが流れています。

私が不思議に感じたのは、中央の瓶の香りがないこと、右はトップノートだけ、左は重厚なミドルラストノート、という非常に偏ったバランスであったことです。
そして、美術館から香りをよく見せていただいたて得た結論は、この香水瓶は、二つの香りをあわせて完成させるための、調香香水瓶なのではないか、ということでした。

エカテリーナは、右の瓶に入った爽やかなトップノートと、左の瓶に入った重厚なメイン・ラストノートを、中央の瓶の中で、その日の気分に合わせて、自ら調香して楽しんだと思われます。

しかし、最高の権力をもち、文化芸術に造詣の深かったエカテリーナの香水といえども、当時使われていた香料は数が限られ、今ほどバラエティに富んでいませんでした。そのため、近代香水のように、複雑でデリケートなニュアンスを表現するのはむずかしかったことでしょう。

今回限定で発売されるエカテリーナの香りは、再現された左右二つの瓶の香りをバランスよくあわせ、さらに現代の感覚にマッチするよう、アレンジしたものです。

彼女の時代に、もし現代の香料と技術があったら、その粋を集めて創られたであろう、洗練された最高の香りを創作するつもりで調香しました。」

エカテリーナ(エカチェリーナ)2世 1729-1796 第8代ロシア皇帝ポーランドに生れ、ロシア皇太子ピョートルに嫁ぐ。クーデターを起こし、夫を追い落として女帝の座につく。

 

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