パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

金工(きんこう) 象嵌(ぞうがん)

110420刀の鍔 金工.jpg

金工(きんこう)

鍛金(たんきん)、彫金(ちょうきん)

本来、刀の鍔は、武器に関わるものなのであまり興味がなかったのだが、いろいろ目にしているうちに、こうした物の質感や、細かい細工などに惹かれるようになった。

 

例えば鉄の鍔。
初めは同じように見える地金(金属)にも、よく練られたものはしっとりとした粘るような艶があり、地味だが金やプラチナとは違う、よさがあると思うようになった。

 

あまり、派手な柄は好ましくない。
この貝の鍔は小ぶりで、装飾も細やかなところが気に入っている。

 

 

 

この刀の鍔には、立体的な装飾が施されている。
主として高彫象嵌という手法が使われている。

貝などの盛り上がった部分は、パーツを別に作り、後から本体につけたものだ。 

 

それぞれのパーツは下部に足がついており、本体には受ける穴があいている。
穴は入口より中が広くなっている。
パーツの足を穴に差し込み上からバチンと打ち込むと、足は穴の中でつぶれて広がり、容易には外れなくなる。

 

象嵌は、金工だけでなく木工、漆工、陶磁器などにもある。

 

今のような鋳造技術(鋳型に流し込む)がなかったので、それぞれは金属を叩いたり、タガネと呼ばれる道具で掘って形作られた。

 

鉄を手で加工するのは、大変な作業だ。 

 

 

 

金工(きんこう)

 

鍛金(たんきん)、彫金(ちょうきん)

日本における金工の技術は、独自の発展を遂げた。地域的条件、資源的条件の影響もあり、熱による接合の技術が用いられず、一個の金属から形状を作る技術が発達したのである。また、日本刀の文化が発達したことにより、鉄を鍛える技術や、刀装具における彫金の技術も優れた進歩を見せた。

 

象嵌(ぞうがん)

 

我が国の金工の技術史においては、熱による接合技術が発達しなかった半面、異なる金属を接ぐための象嵌の手法が発達した。象嵌には、全ての面を平たく見せる平象嵌、立体的なパーツを組み合わせる高彫象嵌(たかぼりぞうがん)、金属に織物のような刻み目をつけ、そこに金や銀の箔を嵌め込む布目象嵌(ぬのめぞうがん)など、多様な技法がある。日本では、日本刀が武士の魂の象徴とされたため、刀装具である鐔(つば)などに、こうした技術がふんだんに使われた。

 

地金(じがね)

日本では、他の国に見られない、特殊な配合の金属が生まれた。例えば、艶やかな黒色をした赤銅(しゃくどう)、暗褐色の四分一(しぶいち)など。それらは、一見すると金や銀のような華美さはないが、奥深い精神性を感じさせる。それらの金属の配合は秘伝とされており、しかも溶解するだけでは色は出ず、追加の工程が必要となる。それゆえ現在においてもキャスティング)での成型は不可能である。こうした金属の使用は、昔の日本では限られた階層の人々に限定されていた。

 

 

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