パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

いずれゆく彼の岸にて待て君

140928仏様のリング2.jpg

 
もっとも多感な時期を共に過ごした友人が去って一年。
 
通夜、告別式、四十九日とのいくつもの儀式を経て、少しずつ心の整理がついていくのだろう。
 
あの日と同じ秋晴れの一周忌にて、境内から墓地に向かえば、やはりあの日のように金木犀の香りが漂っている。
ふと顔を上げれば墓の傍らに、まだ背も低くまばらな花をつけた、若い木が植わっていた。
その幹の幼さが、亡くなって歳月の浅いことを語っているように思う。
 
「本当に明るいひとだったから・・・」
この花に特にふさわしいような気がして、彼女の面影が重なるのだった。

 
深い悲しみも、此(こ)の岸では日々煩悩にまみれ、思い出す心の痛みも間遠になる。
どんなに近しいと言っても、肉親の悲しみには及ばないのだ。
 
彼(か)の岸にて待て、君。
Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.