パルファン サトリの香り紀行

調香師大沢さとりが写真でつづる photo essay

幸福な人

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あるところに、国一番の大富豪がおりました。

贅沢をして暮らしていましたが、いつも家族がいがみ合っていて、心の休まる暇がありません。毎日くらい気持ちで過ごしておりました。

ここのご主人は生まれたときからお金持ちなので、貧乏のつらさを知りません。
裕福なのが当たり前なのですから、お金があってもちっともうれしくありませんでした。

それでも、「なんといってもお金の苦労がないのは恵まれているよ」と出入りの商人は思っていました。 

 

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この商人は体が丈夫でしたので、家族を地方に残して、いろんな国へでかけ珍しいものを仕入れては、城下に売りに来ていました。

彼は生まれつき病気をしたことがないので、健康のありがたさを知りません。

いつもあくせく働く苦労を嘆いていました。

「とにかく健康だということはかけがえのない財産だよ」
と商人仲間にさとされているのでした。

 

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商人には大変美しい一人娘がいました。
年頃の娘たちはみな、「あんな風にきれいだったらどんなにいいだろう。」
とうらやんでいましたが、娘にとっては、小さいころから容姿をほめられちやほやされているので、それが当然でした。

「こんな田舎に埋もれていないで、都へ出て華やかに暮らしたいものだわ」
そうため息をつくのでした。

 

みなそれぞれに恵まれており、それぞれに苦しかったのです。

 

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海岸へりの粗末な小屋に、貧しく病気がちな老人がいました。


朽ちた木の椅子に腰かけてうたたねをしていると、夢の中に大天使が来て

「何か一つだけ望みの物をあげよう。若さでも、財宝でも、名声でも」

とお告げになりました。

老人は少し考えて、

「では、『自分はなんて幸せなんだろう』といつも感じれる心だけをください。」

と言い、その願いはかなえられたのでした。

 

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 written by satori osawa

写真4枚目 パリ・ロダン美術館

写真5枚目 南仏 サンポール・デュ・バンスの教会 壁画


 


 

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