パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

私の楽器 調香オルガン台

調香オルガン台.jpg 私の楽器 調香オルガン台

小学生のころ、学校の課外授業で音楽部というのがあった。

 

放課後になると、小さなバイオリンを下げて音楽室に行く子たちが何人かいた。記憶の中ではなぜか、秋の黄色く色づいたイチョウとセットになっている光景だ。

紺サージの半ズボンの制服に、制帽、黒い皮靴、黒いソックスにバイオリンケースのいでたちはおぼっちゃまらしく、なんとなく育ちの良いインテリジェンスを感じたものだ。

 

ピアノを買ってとせがんだのに、練習をさぼってばかりいたので先生は怒って家に来なくなってしまった。黄色のバイエルを終えてから、黒い蓋には埃がかぶっていた。なので、ぜったいにぜったいにやぶへびになるから、もう、バイオリンをやりたいとは言えなかった。

 

私の音楽的才能は、母のおなかの中に忘れてきたのだろうか?しかし、ある出来事を思い出した。

ときおり「ネコフンじゃった」くらいしか弾かれないピアノに業を煮やした母親は、当時はまだめずらしい、ピアノ自動演奏機を取り付けたものだ。ラジカセではない。ちゃんと、ピアノから音が出るし、鍵盤も叩いてくれる。透明人間が弾いているみたい。

カセットを入れ替えれば、ショパンノクターンとか、いろいろな曲がプロのピアニストとまったく同じに演奏される。何しろプロだから素晴らしい演奏だ。

 

近所の奥様に、「お宅のお嬢さんはピアノがすごくお上手で」などとお上手を言われ、引っ込みがつかなくなった母は私に「下手なピアノは弾くんじゃないよ」と言った。

 

というわけで?ついに私の音楽への道は断たれたのであった。自業自得。

中学になって、フルートをやりたいと言ったら怒られた。その代り、大人になった今、オルガンを弾いているわけである。(調香オルガン台)

 

パルコカルチャーシティ「香水とピアノの調べ」で使われた調香オルガン台とグランドピアノ

 

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