夏、暑い陽盛りの道を歩く。こうした草の生えた土の道もずいぶん減ってしまった。
私の通った小学校は、武蔵野の自然がはぐくむ中にあった。
校舎から正門までは遠く、長い桜並木がカーブして続いていた。
子供の足ではずいぶん時間がかかる。
その上、並木をそれて、草むらを色々な植物を探しながら歩けば、あっという間に時間は経ってしまう。
夏休みの前、クラスの父母会があったと思う。
終わった後、母は一足先に他のお母さんたちと一緒に、しゃべりながら門へ向かっていった。
そのとき確かに母は「門で待ってるからね」と言ってたようだ。
私はそのことをすっかり忘れ、いつものように校舎を出てから道草を食いながら歩いて行った。
たっぷり1時間はかけただろうか。
すると、正門には待ちくたびれて鬼のような顔をした母親が・・・。
その先はどうなったか覚えていない。
白日夢のような、おとろしい顔であった。
小学校の近くの、とあるお家に、放課後ピアノを習いに行っていた。
その途中もころあいの並木道が続いていて、両脇には雑草がモサモサ生えていた。
縁のある、白い木綿の制帽をかぶっていた小さい私。
何をしていたかは忘れた。
でも、あんまりレッスンに来る時間が遅いので、ピアノの先生が心配して家の前に立って待っていた。
『ガーンッ・・・。』
もしかして忘れてしまったのかと、先生は私の家にまで電話をしたらしい。
きっと家に帰った後、叱られたに違いない。
いまだに、あとちょっと、と思っていてついつい夢中になり、すぐに1時間2時間経ってしまうことがよくある。
「習い性」というか、「雀百まで踊り忘れず」というか。
(あ、でも今は、約束の時間には遅れない。かなり正確~。(~_~;)