八十八夜を過ぎると、新茶の時期になる。
毎年この新茶を送って下さる方がいて、「ああ、もう夏が近づいているんだなあ」と感じる。
八十八夜とは、立春から数えて88日たった日(5月2日、閏年は5月1日)を指す。
この日を過ぎ、その年に最初に摘んだ葉を一番茶、新茶という。
暖かい南の方から摘み採りが始まり、桜前線のように北上していく。
新茶は縁起ものでもあり、四季を大切にする日本人には特別な飲み物だと思う。
お茶の木は、冬の間に栄養を蓄えて、春になるとみずみずしい若葉を成長させる。
一番初めに摘み取る葉には、その恵みがいっぱい。
あの甘さと爽やかさは新茶ならではものだ。
夏になるにつれ、葉は紫外線を浴びて固くなり、2番茶以降は苦み物質(カテキン、タンニン)が多くなってしまう。
ちなみに、玉露(ぎょくろ)や、茶道で濃茶用として練られる茶葉は、とろりとした甘味と旨みが感じられる。
これも、紫外線に当てて苦味が強くならないようにという配慮から、摘み取り2週間前に茶樹に覆いをかける。
手間を惜しまず作られたお茶。
この時期、仕事中はずっと新茶をがぶがぶ飲んでしまう。
朝のいっぱいのお茶は脳を活動させ、
おやつの時間に飲めば、疲れを取り去りほっと一息つかせてくれる。
茶の香りは癒し。まさに日本人の心のふるさとと言える。
▶ 花事典 チャ ツバキ科ツバキ属(camellia sinensis)