あの有名な、「雪は天から送られた手紙である」という言葉を生んだ、
中谷宇吉郎博士は「雪」の研究の第一人者である。
昨年知人から、「中谷宇吉郎随筆集」を勧められ、アマゾンで探し、この「雪」という本と2冊を購入した。
自然科学書であり、エッセイともいえる。
結晶の観察、分類、人工雪の製造など、雪についての学問的な内容が書かれているのはもちろんであるが、魅力は別にある。
中谷博士がなぜ雪に興味を持ったのか、どうやって研究していったのか、その工夫はどうして生まれたのか、などが気負うでもなく静かに語られている。
文学作品のような凝った表現をするわけでなく、平易な言葉をつないでいるだけなのに、この本は本当にロマンチックな読み物だ。
「雪」は薄いので、バッグの中に入れて地下鉄の移動のときなどに少しづつよんだ。岩波新書で1938年に出され版を重ね、1994年に岩波文庫で第1刷が発行されている。
新しい知識は、すぐに古くなってしまう。そこだけにフォーカスした本は、鮮度を失い、消費されていく。
科学の本当の面白さは、時代を超えた不変の、好奇心の泉にあるのだと思う。