紐結びの技術は世界中にあり、それぞれに歴史をもっていますが、日本ではとくに装飾性を重視した飾り結びが非常に発達しました。
日本の飾り結びは主に貴族生活の中で使われ、装束や調度・仏具などを飾るさまざまな結び方が生まれました。
のちには武士の礼法にも伝えられ、武具や宗教用具の飾りとして、また茶道・香道の世界でも各種の結びが生きています。
その中でも、伝を授けぬ者には決して解けないように結ばれた、「封じ結び」という紐飾りが日本にはありました。
例えば、文箱を結ぶ紐は、中の文書の秘密保持のため、自分にしか分からない数で結んでいます。
そのため、他の人がほどいて文箱の中の手紙を読み、そっと結びなおしても形跡が残ります。
お茶は昔、薬ともいえる貴重品だったので、ここにもまた特別な飾り結びを施しました。
茶壺の開封前と開封後では、違う形の結びをすることによって、外側から中身の状態が判別できるようになっています。
同時に、毒が混入されたりしないよう、保管するための鍵の役割もありました。
茶壷中央の長緒の結びは、輪がいくつも重なって、複雑に見えるようですが、紐の端を引くと、絡まずにするすると解(ほど)けるようになっています。
もし、結びを知らない人が形だけ真似をして結んでも、次にあけるときに絡(から)まってしまったら、だれかが手をつけたということが分かるというわけです。
(魔封じ)
他にも、幸せを願ったり、魔物から守る、などの意味を持たせた飾り結びもあります。