パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

宮大工の知恵 松浦昭次

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「宮大工千年の知恵」(松浦昭次)が平成12年に、つづいて「宮大工千年の手と技」が翌年出版された。

 

 

もうあれから10年になるのかあ・・・。

まだ、四ツ谷の駅ビル「アトレ」に書店があって、待ち合わせまでの時間ぶらぶらとしていたときに見つけた。
書棚にたくさん平積みになっていて、表紙とタイトルに惹かれた。

 

先週水曜日に彦根城に行ったので、卒然と思いだしてまた、例のごとく本棚をひっ繰り返してこの本を出してきたのだった。

 

読んだ当時、日本人の昔からの知恵にすっかり感動したものだ。

その後、建築を目指す若い人に買ってあげたりしたものだけど、彼は読んだだろうか?


その頃は・・・いいえ今でも?「建築をするならイタリアに行って勉強」みたいな雰囲気があるけれど、やはりまず日本の建物を学ばなければ、海外に行って相手にされないよ、と思ったのだ。

そうはいっても、私自身、内容をほんの一部しか覚えていなかったが、読み返して再びなるほどと感心した。

 

木造建築の構造や大工道具、専門用語などが、やさしい語り口でつづられているので、すらすらと読みやすい。

特に、「間尺に合わない」など、普段何気なく使っている言葉の由来など、建築用語は面白いのだ。
(若い頃、「よっ、だいとうりょう!」という掛け声は、なんとなく大統領だと思っていたが、大棟梁であった。)

 

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↑この写真は浅草寺

 

そして、西洋の数学、幾何学に比べても遜色ない、すぐれた「規矩術」というものを駆使して建てていたというのは、日本と言う国を誇りに思える。

他にも、美的感覚に基づいて、わざと部分のバランスを崩して総体のバランスをとったり、驚いてしまう。

たとえば屋根の下、細い棒状のものが2列、並んで見える。
これは、軒にそりをだすための垂木(たるき)というそうだ。
等間隔にみえるが、美しい反りをだすために、隅に行くほど微妙に間をずらしているのだとか。

 

知恵と経験によって古の時代から受け継がれてきた技能は、机上の建築理論や、キャドで書いた図面ではできない。コンピューターだけでは計算できない、たとえ、できたとしても時間がかかってしまう。

寺社仏閣の修復プロジェクトでは、大学のセンセイや、建築を学んだ「技術者」と、現場で経験を積んだ宮大工=「技能者」の意見の分かれることも多いそうで、建築基準法なども大きな壁になっている。

著者の苦労や、将来への心配などがうかがえる。

優れた職人さんが腕をふるう場所が少なくなっているのは、本当に残念なこと。
どこの世界にも通じるものだ。

 

 

3章は「日本の木の文化」について書かれている。

「木を生かすための、さまざまな知恵」 や「日本建築の美と粋」について書いてあって、ここは好きなところ。

日本は、「木と紙」の国。
自分の紙好き、材木好きはやはり日本人のDNAなのかなあ。

 

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本当にあっという間に読めるし、何度読んでも楽しい。
きっと、ロングセラーだろうから、まだ書店にあると思う。

 

 

 

 

 

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