パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

金木犀 キンモクセイ

101008キンモクセイ2.jpg

 

キンモクセイ

 

 

キンモクセイは爽やかな秋晴れの日にふさわしい花だ。

 

 

残暑もようやく終わり、ひと心地ついたころに本格的な秋の訪れを知らせる。
開花時期は短くても、みんなの記憶に残る花木のひとつだろう。

季節を告げる「香る花」の代表は「春の沈丁花(じんちょうげ)、秋の金木犀(きんもくせい)」と私は思っている。花より先に、香りで人にそのありかを知らせる。

 

小さな十字のオレンジの花は、可愛らしいが深い緑の葉に隠れるようで咲くまでは気がつかない。沈丁花もやはり、重い常緑の葉が地味な印象だ。

 

 

金木犀からは天然香料も採られる。天然香料は咲いている花の匂いとは違う。爽やかな部分はもっと凝縮され、コクのある甘さとむしろアニマル感がある。

そのため、咲いている花の香りを再現するには、別の香料を組み合わせて調合香料をつくる。

 

金木犀の中心的な香りは「βヨノン」と「γデカラクトン」である。(もちろん他にも100に及ぶ成分が入っているが)

「βヨノン」は、粉っぽくウッディで、それ自体を一品で嗅ぐと、拡散性があるように思えないが、キンモクセイの香りの中にあっては、この「β―ヨノン」が遠くまで香りを運ぶ働きをする。

「 γデカラクトン」はフルーティな部分を受け持っている。甘い果実感は桃の香りにも似ているが、ピーチを作るには「γウンデカラクトン」を使う。

 

一口にフルーティと言っても系統があり、フローラルといってもグループがある。

キンモクセイやピーチ系、アップルの香りはジャスミンやミュゲ(スズラン)と相性がよい。

一方、
ローズはライチと合うが、ピーチ系とは難しい。

 

 

固定概念にとらわれてはクリエイティブなものは作れないが、セオリーは知らないと回り道をする。

どんな世界も同じことだと思うけれども。

 

 

Copyright © PARFUM SATORI All Rights Reserved.