ノウゼンカズラは、藤のようにからみついて枝を広げ、夏の暑い時期に木陰を作る。
派手な朱色の花だ。
記憶の庭のパティオには、ねじれた幹がよじ登り、
頭上には、カズラはいっそ毒々しいほどにたわわに咲いて、
足元にあるごく小さな池に、あかい花がいくつも浮かんでいた。
数歩先の青く伸びた雑草に、まぶしい日差しが照りつけている。
クロアゲハは音もなく訪れ、飛んではとまり、
蜜を吸い、離れては戻りを繰り返し、
私は硝子戸の横に立ちつくす。
遠い日、真昼の夢。
花事典 ノウゼンカズラ科 ノウゼンカズラ属 学名:Campsis grandiflora