パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

私の読書遍歴2 時代小説

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年輪か流れか、読書遍歴は。

 

なんといっても時代小説はいい。時代劇を小さい頃から見ていたので、時代小説を読むようになったのは自然な流れだ。

 

大学生の時に読んだ時代小説作家。五味康祐柴田錬三郎司馬遼太郎池波正太郎。読後の爽快感が好きで、池波氏の本は30代までずっと繰り返し読んだ。私のように、東京都地図に、秋山小兵衛の足跡をたどりながら赤ペンで書き込みをした人は多いだろう。
 

 

藤沢周平氏の本は、一回り年上の人に勧められたのだが、20代では人生の機微がわからなかった。30半ばを過ぎてだんだんとその味わいが分かるようになり、すっかりファンになった。キャリアが長いので年代で作風が変わっていくのがわかる。暗い作品の多い時代より、やはり晩年の作品がいい。力みが抜けて人間を見る目の温かさを感じる。(あ、生意気言ってすみません)

 

いろいろな人を読むというより、ひとりの作家に惚れこんでしまい、読みつくすタイプだ。だから案外レパートリーは狭いのかもしれない。

 

10年前に隆慶一郎氏を知り、ここ5年では宮城谷昌光氏にのめりこんでいる。同好の方と小説の話を始めると、盛り上がって止まらない。

 

迷惑な話だが、気に入った小説があると、人にあげたがる。もらった本というのは、案外読まなかったりするものだ。でも、気に入った人には特に薦めたくなってしまうのだ。そして、読めとは言わないが、内心では一緒に共感してもらいたい~!と思ってしまう。



作品数が少ない作家は次が出るのが待ち遠しくて、飯島和一や佐藤賢一(フランスの時代小説だが)は、常に書店でチェックしている。

 

飯島和一氏の「始祖鳥記」は、特にモノづくりをしている人たちに何冊も渡した。あげるとまた買って本棚に並べ、またあげてまた買う。

 

文春から出している「本の話」という小冊子で、デュマ3代の物語が連作で出た(佐藤賢一氏)のを知り、読むのが楽しみだ。(が、文庫になるまで待っている)
ここで「三銃士」を書いた大デュマの息子が、「椿姫」を書いた小デュマだということを初めて知った。あ、ちなみに、有名な男性用香水の「アラミス」は三銃士の主人公の名前。



今は宮城谷氏どっぷりなのだが、外国文学、サリンジャーコレットなんかも17歳の追憶の本として頭の片隅にあったりする。

 

モーパッサンの「脂肪の塊」も、モームの「雨」も、椿姫も、やはり若くみずみずしい精神の、汚れたものを嫌悪しつつ惹かれるような時代に出会ったから、衝撃をうけたのであって、大人になってから初めて読んだらどうだっただろう。単なる娼婦聖女説で片付けてしまいそうだ。

 

だからこういう本は「再び」めぐり合うもので、大人になって初めて読むものではないかもしれない。昔の記憶をなぞりながら、読後に自分がいかに成長し、世俗にまみれ、(脂肪の塊を腹に捲き)、「あー、昔は子供だった」or「純粋だった」などの感想をもって過去を振り返るのだ。

 

ところで最近また「ライ麦畑でつかまえて」が紀伊国屋書店でベスト10に入っていると知りびっくりだ。



本棚にならぶ著書名を見ればマイブームが一目瞭然だ。どうしても捨てられないお気に入りはずっと定位置にあり、はまっている作家の占める割りあいが、伸びたり縮んだり入れ替わったりする。

 

オフィシャルな本棚は専門書100%だが、プライベートな本棚の勢力図はオジサン45%、少女20%、少年10%、その他雑食。

 

本を書くのは大変だが読む方は簡単だ。料理だって、作るのは大変だが食べるのは一瞬。読者というのは貪欲で、「おなかがすいた~!ごはん~!おやつ~!」と口をあけてねだる小雀の如く、常に文学を消費をし、飢えている。

 

成功した作家は、次回作を期待され、プレッシャーと編集者に追いまくられるだろう。女王蜂が卵を産むだけに生きているように、ろばが金貨を生みつづけるように。



うんと年をとり、目が悪くなって本が読めなくなったらと思うと今から心配だ。朗読のテープが売れているのはわかる。でも、俳優さんだと声に色が付いているので嫌だ。

 

きれいな女子大生にアルバイトを頼んで、毎日一時間くらい朗読してもらおうかなと考えている。




なんか、話があっちこっちですみません~。



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