陶芸家の阪井茂治さんに、鍋島焼の香炉をいただいた。
置き香炉と呼ばれる、大きくて上に火舎(ほや・網状になった蓋)のついたタイプは割によくあるのだが、聞き香炉は数が少なく、限られたお店にしか置いていない。香道人口は多くないので、需要が少ないのだと思う。
そのためなかなかすてきな香炉にめぐりあわないと、以前お話したのを覚えていて、阪井さんが作ってくださったのがこの香炉。
私は鍋島焼が好きで、特に絵付けの中ではきれいなエメラルドグリーンがいいと思う。また、桜に波や、宝尽くし、雪輪模様など、古い鍋島焼の古典柄は今見てもとてもモダンだ。
ちなみに、番町皿屋敷で、お菊が割って、殿様にお手打ちになったのが鍋島焼のお皿。「1枚足りない、うらめしや~」というやつである。
江戸時代、鍋島焼は佐賀藩のお家焼きで、将軍家へ献上された高級品である。現在、本当に古い価値のあるものは世界で20枚しかないと言われ、そのうちの17枚かを、スイスのコレクターが持っているという話を聞いたことがある。(この情報は正確ではない)
昔、窯元を見に行ったことがあるが、街から離れた山里に、高い崖を向こうにして坂を登るように、煙突がたくさん建っている。そこへは橋を渡らないと入れない囲まれた場所だ。作陶の秘密を守るために、工人を逃がさないよう、藩士が橋の番をしていたそうだ。
かなり哀しい話を聞いた。
でも、この香炉は新しく、明るくてとても素敵。この澄んだ青と緑の柄は私の好きな組み合わせ。
阪井さんはとても優しくて、純粋な方だ。お話をする時、いつも少年の様なキラキラした目をされている。
渋谷の東急、三越、阪急デパートほか、フランスやルクセンブルグ大使館など、定期的に展覧会をされている。
今度は2月10日から16日まで、横浜高島屋7階の美術画廊で作陶展をされる。
素晴らしい作品の数々を拝見できると思う。
阪井茂治作陶展
平成22年2月10日(水)→16日(火)
10:00AM →19:30PM(最終日は16:00まで)
横浜高島屋7階 美術画廊にて
阪井さんの工房➤ 沙羅の辻