「しゃくやく」と呼ぶと、艶なる佳人のイメージだけれど、「ピオニー」といえば優しいひとにも思える。
一番好きなのは小ぶりの白いしゃくやく。においもいい。ずんどうの花入れにバサーっという感じで20輪もいれたら、部屋いっぱいがほの明るい光で満たされる。
牡丹(ぼたん)は一見、似ているようだがにおいが違う。ひどく青臭いのだ。
このしゃくやくは初め濃いピンクで、花弁の重ねが少なく、中央に金色の蕊(しべ)が行儀よく並んでいて可愛い。
大きく咲いていくにつれ、色は淡くなり白に近づいていく。
ある日、風のない静かな室内で、はなびらはぱさっと重なって散り落ちる。せいいっぱいに開き、ついには、自分自身の重さを持ちこたえられない。
散る瞬間にそこにいたくて、じいっと見つめてしまう。花は、視線の重さに耐えかねたのかもしれない。
写真:開きかけと、散る間際の芍薬
▶ 花事典 シャクヤク:ボタン科 ボタン属 学名:paeonia lactiflora