昔はどの家にも一本は庭に柿の木があったように思う。
友達の家の縁側から、冬枯れの庭に赤い熟柿がしがみついていたのを見たような気がする。
「気がする」というのは、子供のころの記憶が本当にあったことなのか、あとから聞かされた情景を、実際に見た映像だと思いこんでいるのか、最近では曖昧になってきたからだ。
柿の中のタンニンが不溶性物質に変化すると、渋はなくなり(舌には感じなくなる)甘柿になる。
ゴマの入った柿がおいしいというのは、タンニンが不溶化して黒くなったからだと聞いた。
多くの品種の柿は渋いものだそうだ。
しかし渋抜きをした渋柿の、なめらかで上品な甘さは甘柿に勝ると思う。
ぐにゃぐにゃになるほど熟していないのに歯触りが程よくなめらかで、甘さがすっきりとしている。
この柿は西条柿という、本来は渋柿。
渋を抜いてある。
形が小槌のようだから「コヅチ」と名付けたのだそうだ。
どれも、こんな風にピーマンみたいな窪みが十文字に入っている。
紐でもかけて育てるのだろうか?
とても面白く珍しい。
いつもは丸ごと剥いてから割るので、
この形を目にしたとき一瞬、どうやって剥(む)いたらいいのか?と思ったりもしたが、
4つに割ってから剥けばなんということはない。
(剥いてもらったのだけど)
甘柿は固めでもおいしいと思う。むしろ熟しすぎよりもいい。
しかし今日食べたのは、甘いことは甘いが まだ少し歯触りに硬さが残る。
あの渋柿の程よい柔らかさを知ってしまうと、ちょっと不満。
明後日くらいに残りを食べてみようと思う。