パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

香りを表現する楽しさ parfum satori school

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お教室が終わるときに、生徒さんに質問をしてみました。
「香水を作るの楽しい?どんな時に楽しいと感じる?」

生徒さんがいくつか挙げてくれましたけれど、これは特に私の心に残ったことばです。

 

「先生が私の作った香りにコメントをしてくれて、それを聞くと、自分の作った香りがとても素晴らしく思えてくる」

「初心者だから、この程度の香り、上級になったからこれだけの香り、というのではなくて、だれが作った香りも、先生が説明してくれるとなんだかいいものに思えるのです。」

 

たとえば生徒さんの処方箋に赤ペンで記入したり香りにコメントしているのは、 

「この部分はイメージがよく表現できていますね、この香りを入れるともっとあなたの理想に近くなるかもしれませんよ、この香水はこんなところがとても素敵です。。。」などなど。

みんながどんな気持ちで、どんなイメージで作ったかをよく聞いて、できた香りの特徴や香料の選び方、組み合わせについて、私が感じたままに話すだけなのです。

 

 

それは、初心者にも上のクラスの人に対しても同じことです。

 

 

同じ景色を見ていても、人は違うものを見ています。

たとえば目の前のアスファルトの道路一つとっても、銀杏並木の四季があり、木漏れ日の落ちる位置に季節と時間の流れを感じたりします。

 

このように感受性によってはイキイキと見える景色でも、そうでない眼にはただ流れていく場面の一つに過ぎません。

そんな光景も「感動を素直に説明」すれば、ぼんやり眺めていた人にも、世界が変わって見えるかもしれません。

 

また、本当はたくさん感じることがあるのにそれを表す言葉がないと、どこかあいまいな景色になって記憶に残らない。
そんなこともあるかもしれません。

同じ暮らしを続けていても、見方が変わって表現が増えたら、きっと毎日が豊かになる・・・。

 

 

 

一つの香りには、たくさんの要素が隠されています。

いいえ、隠れているのではなくて、本当は露わになっているのに、多くの人は気付かないか、表現する言葉を知らないだけなのです。

だれが作ったからどうとかではなくて、その香りの要素を、ただ感じたままに口にするだけです。

それを聞いた人が「なるほど」と思ったり、「そうじゃない」と自由に考えたりする、それがとてもいいことなのだと思うのです。

 

この生徒さんも初めて半年で、香りの表現が的確になり、ボキャブラリー、言葉力が増えました。

  
それでも、香りが好きで、縁があってきてくれた方たちには、
そのひととき、真剣に向き合って香りの学びを伝えたいと思っています。

一生にできることは限られているからこそ、自分の信じるようにやってみたいと思うのです。

 

 

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