前回からの続きで「京ろうそく」の体験教室、色かけ。
先ほどの流し込みの作業場の隣では、ベテランの職人さんが、手際よく蝋燭(ろうそく)に色をかけている。みるからに難易度が高い。
おおきな鍋の中には赤い染料の入ったロウ(蝋)がたっぷりと溶けていて、脇(わき)の盆には、生成(きな)り色のロウソクが並んでいる。
ロウソクのお尻にはすでに赤いロウがちょっぴりついており、穴に竹の棒がさしてある。この下準備は傍(かたわら)にいるマダムの役割。
この棒をもって、赤いロウを上から注ぎかけて色をつけるのだという。赤いロウは面を伝わるにつれて冷えて固まり、表面に定着する。
右手の柄杓(ひしゃく)ですくった赤いロウ。
左手で持ったロウソクはやや斜めにかしげ、棒をはさんだ指先をずらすようにして、軸を中心にクルリと回転させる。と同時に、側面に赤いロウをシャバシャバと垂らす。
口で言うと簡単そうだが、右手と左手で異なる動作を、しかも同時におこなうのでとても難しそう。しかも、芯にロウが垂れないように、斜めにかしげた下の面にロウを伝わせるのでますます難しい。
よどみなく一連の作業をおこなわないと、生地の部分が白く残ってしまう。それを修正しようと2度、3度とかけ直すとそこだけ厚ぼったくなり、表面がでこぼこになってしまう。
ここで質問。
「芯をつまんで、ロウソクのお尻から鍋にどっぷりとつけたら簡単そうですが・・・どうしてわざわざひっくり返してかけまわすんですか?」
「芯の周りの、上の面を白く残すためには、かえってこのほうが早いんです。あとから直すのは大変なので」
なるほど。液だれの方向や、いかに均一にかけるかなどを考えると、ひとつずつの工程が実に理にかなっている。
さっそく席に座らせていただいて、大きなエプロンをつけてもらい、いま見たようにひしゃくを手にする。
うわー、ものすごく緊張する!
リハーサルで何度かひしゃくですくい、液のかたさ具合とか加減をみて、左手の棒も回転させてみたりするが、同時にやるタイミングが難しい。
呼吸を整え、えいやっとばかりにかけてみる。『アアァー・・・』声ならぬ悲鳴が。
回し方が足りず、白い部分が残ってしまう。さらにかけ足してみたが、生地がちょっぴり残ってしまった。
もう一本にトライするも、ああ無情。また失敗してしまった。おのれの不器用さにがっかりする。ちょっとくやしい。。写真を見ると脇があいて、手首だけでひしゃくを返そうとしている。こういうの、脇が甘いというのだろうか。
いやいや、「つくることは簡単ではない、難しいということを理解するのも体験の大切なこと」である。
と気を取り直す。
『さて、いよいよ絵付け。楽しみ~♪』
と思っていたら、たった今、自分で色をかけたロウソクを
「はいこれに絵付けしてください」とおっしゃる。
『あれ?この、失敗したやつに絵付け??そうだよな、、、自分で責任取らなくちゃ...』
って、不出来なものでも、自作だからこそ愛着が湧いてこようというもの。
「ほらね、きれいな面を表に出したらわからないでしょ」と箱に詰めてくださった。マダム優しい~。
次回、いよいよ最終段階の絵付け。なんの柄にしようかな~。実力をかえりみず、理想の絵柄(妄想)だけがふくらんでしまうのであった。 つづく。