パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

コブシ,マグノリア属,Kobushi magnolia

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辛夷(コブシ)は、よく似た白蓮(ハクレン)より早く咲き、桜が咲き始める頃には終わる、そんな順番だろうか。
 
これは3月下旬の写真だから、ほんの半月ほど前のこと。
 
その桜も、ソメイヨシノの次の八重桜(ヤエザクラ)の時期に移っていて、本当に春は毎日が早い。
 
この辛夷の木は円錐形をしていてとてもきれいなのだが、そばに近づくことができない。
 
 
 
辛夷(コブシ)も、木蓮モクレン)も、白蓮(ハクレン)も、泰山木(タイサンボク)も、朴の木(ホオノキ)も、唐種招霊(カラタネオガダマ)も、シャンパカも、みんなマグノリア属で、どれもいい匂いがする。
 
しかしそれぞれの花の香りには、共通の部分と異なる部分があって、それが特徴となっている。
 
 
例えば、同じシトラス(柑橘)の香りでも、レモンとオレンジとライムは、共通の爽やかな瑞々しさを持つ一方、レモンはグリーン感があり、オレンジは甘く、ライムは炭酸のような発泡感あるというような固有のキャラクターがある。
 
 
先日書いたように、白蓮の咲き始めはシトラス感とヘディオンのようなグリーン、それは泰山木(タイサンボク)に似ている。そして次第にミルクラクトン、ゴム調の甘いボリュームのある香りに変わっていく。
 
唐種招霊(カラタネオガダマ)はバナナのような匂いで、メロンやベリーの熟した朴の木の花の匂いに近い。

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こちらのコブシは倒れかけた枝にパラパラとしか咲かないのだが、
低いので近くによって香りをみることができる。
 
コブシの咲き始めはシャープで、まるでスースーするシップ薬のような、メチルサリシレート(サリチル酸メチル)の匂いがする。
大山蓮華(オオヤマレンゲ)もそのような匂いがする。
 
かと思えば、終わりかけの別のコブシの木を嗅いでみれば尖ったところが少なくなって、甘ずっぱい匂いに変わっていた。
 
 
 
毎年毎年、繰り返し花の香りを匂ってみれば、思い違いに気がついたり新しい発見がある。
印象はときにぶれるのだが、最終的には統合されて、その花の持つ本質的な部分に近づいていくのだと思う。
 
 
 
 
 

 

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