「干し草ロール」というらしい。
南仏の道路を走っていると、畑にこんな円筒形のものがたくさん転がっている。
とても牧歌的な風景。
車の窓から思わず写真を撮るが、いつも遅い。
大地が広いからあまり気がつかないが、車は思いのほかスピードが出ているのだ。
道がカーブして新しい景色になるたび、また見れないかな?と待ち構えているが、次に見えたときには油断していて、また手遅れ。
「スロー!」と同乗者たちにからかわれる。
「とめてとめて!」
車を止めてもらってちゃんと撮ることができた。
四角く固めたのもある。
干し草ロールは麦を刈って巻いたもので、四角はトウモココシだったかな?
教えてもらったのだけど・・・、メモが見つからない。
とても好きな光景なので、次の日も、その次の日も、見つけるたびにとめてもらった。
「さとり、ほら、カメラを持って早く来なよ!」
昼間の暑い盛り、滞在中のカントリーハウスの庭先に呼ばれ、
大急ぎで行くと、向こうから干し草を摘んだトラックがやってくるのが見える。
乾いた道を土ぼこりをあげて爆走するトラック!
あんなに苦労して撮ったのに、すぐ家の前の道を通るとは!
ああ、干し草ロールが木の陰に入ってしまう!
カメラを持って走りながら追いかけて撮る。
わーい!アップで撮れた!
でも、撮るのに夢中でよく見てなかった。
なんか、やっぱり私トロイのかなあ。。。
去っていくトラック。
この周囲は麦畑だったみたい。
遠くの畑では、日中に水をまいていて
その霧になった水の匂いが、ずうっとこっちまでにおって来る。
そして夕方になり、太陽が斜めになり木の蔭に隠れるころ、また別の匂いもやってくる。
暑い夏の日に薫る、青く蒸れた芝生を思わせる、でも乾いた、もっと甘くしたような香り。
昔、物語の世界で聞いた「干し草の香り」という言葉が、ようやく現実のものとして頭の中で結びついた瞬間。
干し草のような香りといわれるウッドラフ(クルマバソウ)、桜もち、クマリン・・・。
今までの「知識の断片」が、体験を前にひとつに統合され、腑に落ちていく。
→次のヘイの香料(Hay Absolute)につづく・・・。