パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

空蟬(うつせみ) ecdysis of a cicada

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7月上旬、通勤途中の道路に脱皮したばかりの蝉(セミ)を発見する。
歩道と車道を隔てるように並んだ、コンクリートの円柱の途中にしがみついていた。

まだ羽の脈が淡い緑色をしていて、ゆうべ生まれたばかりのようだ。目が黒々としてあどけなく見えるのは、からだの色がまだ薄いからだろう。

セミの抜け殻だけなら見た事があるけれど、殻から出てきたばかりの本体と並んで見るのは初めて。油蝉(アブラゼミ)かな?

周りを見渡すと、地面はブロックとアスファルトで一面に固められているのに、いったいどこから這い出てきたのだろう?

謎である。

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歩道をはさんで車道の反対側は、新しいビルを建てるための大規模工事中。地面を掘削したことで、あわてて出てきたのだろうか?それにしても工事現場は高い塀で囲われている。


それとも、その先に雑木林があるので、そこからやってきたのかも。
前の日は風が強かったので、枝から飛ばされてきたのかな?
羽が曲がっているけれど、ちゃんとに飛べるだろうか・・・。

謎と心配を後に残して、アトリエへと向かう。

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翌朝、また前を通ってその後がどうなったかを確認。

円柱に抜け殻は残っていたが、出てきたセミは当然もういない。
無事に旅立っていったことを祈る。



蝉は「幼虫は7年を地中で過ごし、成虫は1週間で生涯を終える」とずっと思っていたが、日本の蝉の場合、幼虫時代はもっと短くてアブラゼミは3-4年だというし、条件がよければ羽化した後1ヶ月も生きる個体もあるらしい。

『思い込みって多い』と気づくこのごろである。
いきものが脱皮をするのは、小さくなった殻を破って成長するため。




蝉は中国では再生、復活の象徴であり、フランスでも幸福のシンボルとされている。アールヌーボーでは蝉のモチーフがよく用いられている。

一方、蝉の生涯は日本では無常観とともに「もののあわれ」と捉えられた。
空蝉(うつせみ)、現身(うつしみ)と言う言葉には、日本独自の情緒が感じられる。

有限の命の繰り返しが、無限に続くのである。









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