パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

南仏のカントリーハウス③ Country life Ardèche

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ジュニアが桃を摘みに行くというのでついていった。
家の前の道路をはさんで、果樹園が広がる。
 
葡萄棚の向こうには、桃の林が幾筋も連なっている。
 
 
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アプリコットと桃の匂いの違いについて話しながら、
もいで歩けば籠がみるみる桃でいっぱいになった。
そばにあった箱に入れて持ち帰る。
 
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そのフレッシュなピーチと紅茶で朝食を取った後は、みんな何かしら用事をしている。
 
古い車の、さびついたバッテリーを交換して走れるようにしたり、キッチンの水漏れを直したり。
使わない暖炉の掃除やら、草むしりやら。
広い屋敷の仕事はいくらでもある。
 
私も箒(ほうき)を持たされて、申し訳程度にテラスを掃いたりした。
なんだか、夏の林間学校に来たみたいだ。
 
納屋にはサイドカー付きのバイクや、トラクターや、カヤックとか、洗濯機とか。
洗濯はまだ電気が来ないからできないけど、帰る日までには直るだろう。
 
サイドカーに乗る?と聞かれたが、トラクターに乗ってみたいと言って笑われた。
だって、高いところから運転するって楽しいでしょう?
 
ご主人がこのカントリーハウスをうけついだのは30年くらい前。
 
来るたびにリフォームしたり、修理したりして手を入れ続けてきた。
子供たちはみんな、夏休み、クリスマスと、休暇のたびにここで過ごし、この家とともに成長した。
小さい頃からの家族写真がたくさん飾ってあって、みんな心からリラックスしているようだ。
 
そんな家族の愛着が感じられるからこそ、最初の印象と違って家も全然怖くなくなった、。
 
この土地にあった合理的な造りなどを興味深く思う。
 
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近くには小川が流れている。昔は家の下を小川が通り、水車小屋だったこともあったそうだ。
 
冬は、突然に山から水が出て、家のあたり一帯が水没することがある。
一時間くらいの間に水位が上がってくる。
 
半地下にあるゲストルームが水没するので、家族総出で家具を上に運ぶ。
 
 
もともとは、このあたりはシルクの産地。
養蚕が盛んで、私の寝ているこの部屋は、天井から蚕棚(かいこだな)がつるされていたようだ。
なごりのフックが天井に残っている。
 
昼間、息子とお父さんは農園へ行く。残った年寄りが絹を作ったそうだ。
その後、養蚕が廃り、農家が残った。
そういう歴史のある大きな農家。
 
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庭にはほかにも、アプリコット、プラム、葡萄、林檎、ミラベルといった果樹がある。
 
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チェスナッツはリスたちのために。
わんさかやってきて、残らず食べてしまうので、一粒も口に入らないと嘆いていた。
 
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林檎はまだちょっと早い。
豊かな恵みに囲まれて、人生観が変わるなあ。
 
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150年以上のプラタナス、ポプラ、リンデンの巨樹の落とす影が、太陽から家を守る。
昼食後、6時ころまでは陽が照って暑いので、皆家の中で本を読んだり、軽い昼寝をする。
 
家は厚い石造りで、窓が小さく鎧戸が付いている。
だから、日中は熱気の入るのを防ぐため、南と東の扉をぴったりと閉める。
家の中は薄暗くてひんやり。
 
そして夕方になれば、窓を開けて風を入れる。
 
 
というわけで、電気なし生活が始まったのだが、ネット以外はまったく支障がないような気がする。夜、真っ暗なのはやや不便だが、夏の日暮れは遅く、あっという間に朝になる。
 

 

 

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