堆肥、その生きている土。
呼吸する土。
冷たい朝に、もくもくと湯気を立てて、ふかふかの土がやってくる。
トラックで運ばれて、小さな山がいくつもできている。
荷台から降ろしたての土は、中に含まれる水蒸気が湯気となって上がっている。
少し落ち着いた土の山も、スコップで猫車に積み替えるたび、再び吐く息が白い。
この時期の新宿御苑では、こうしたすばらしい堆肥の山を見ることができる。
こうして猫車に積まれた堆肥は、林の中、樹の根元などにおろされ、
スコップで平らにならされて広く敷き詰められていく。
職員の方が大勢で一生懸命作業している姿をみていると、なんだか春が待ち遠しくてわくわくしてくる。
一握りの堆肥の中には、ものすごい数の微生物がいるそうだ。
これが植物残渣を食べたり、微生物どうしが食べられたりしながら、分解するときに熱を出す。
60度位まで上がり下がりの温度変化の中で、様々な菌相ができ異なる成分が分解されていく。
近づいても嫌な臭いではない。
少し焦げたような、樹皮のような、乾いた、スモーキーアーシーなにおい。
たぶん、においは堆肥の素材によっても異なるのだろう。
堆肥と腐葉土、私にはいまひとつその区別がはっきりしないのだけれど。
腐葉土は、その名の通り原料が落ち葉をつかったもの。
私も昔、庭の落ち葉でつくったことがあるが、なかなかうまく腐食してくれなかった。
ただほっておけばいいというものではなく手がかかる。
堆肥はもっと素材がいろいろで、落ち葉の他、木や枝、樹皮などをカットしたものや、牛糞や鶏糞などの動物由来の素材を使ったものもある。
自然に任せるのではなく、人の手によって醗酵を促進させる。
ここでは一年を通じて、多くの樹木を伐採したり剪定している。
さあまた、トラックが出かけていく。
ご馳走をとりに。