パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

精進料理のお教室 Buddhist cuisine

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塗りのお盆に並んだ5つのお椀に、精進料理が盛られている。

 

今日の献立は、豆のおばん(ご飯)、わかめとよもぎ麩のお汁、白和え、せりと切干大根の胡麻和え、春菊の海苔巻きの五品。

 

この器は持鉢(じはつ)といい、漆のお椀が5枚、入れ子になっている。
「持鉢」は、臨済宗での呼び名であるが、禅宗では「応量器」といい、いずれも僧侶が食事の時に使う。

本来は鉄製や土製のものだが、漆塗りも鉄と同等とみなされる。
そのほうが軽く扱いやすそうだ。

簡素な暮らしにふさわしい食器。
先生も人生の最後はこれだけで暮らすのが理想という。

それは草庵の思想にも似て。

 

掌に裏に返してひとつづつ椀をお盆において、
大きなお椀から順にご飯、吸い物、副菜3品を装(よそ)う。

食事の後はくるりと洗って、また大きなお椀の中にすべてしまわれる。
非常に合理的である。

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この日、麹町のM先生に精進料理を教えていただいた。

皇居の見えるご自宅で開く、生徒4人の落ち着いたクラス。
決まってはいないが、ときどきイレギュラーで声をかけていただくのである。

広いキッチンに立って、みなそれぞれ切ったり混ぜたりを少しづつする。

精進料理と言ってもM先生のは難しくない。
きちんと、しかも手早く作られたおばんざい。
それは本当は先生が下ごしらえをしてくれているからなのだが・・・。

上はせりと切り干し大根の胡麻和え。
切り干し大根は火を通さないで水で戻したままで使う。 

胡麻は皮があるので、そのままではせっかくの栄養素が吸収されない。
なのでねっとりとビロードのようになるまで黒ゴマをすり鉢で摺りに擦る。

どの味付けも僅かな醤油や出汁だけで、あとは素材の甘さで滋味あふれるお味。


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お食後はかわいい和菓子とお番茶を頂きながら先生のお話を伺う。
この右の干菓子は辻占(つじうら)という。

フォーチュンクッキーの原点で、これを見たアメリカ人が帰国して始めたのだという。
私は中国のものだと思っていたが、もとは金沢のお菓子だそうだ。

中に小さな紙が入っていて、それがストレートな内容ではないのが面白い。

 

私の引いた占いは「いさぎよき」。武士の絵がかいてある。

うーん。謎めいた言葉である。

自分なりの解釈をして、みな納得するのだろう。

 

ひとつひとつのお料理はごく普通のものだが、
何気ない中にいろいろと知恵や工夫があって、そのお話を伺うのがとても新鮮だ。

 

お料理だけでなく、お道具一つとっても、
長い歴史のふるいにかけられたものというのは優れたものである。

日本の素晴らしさを再認識する勉強。

 

 

 

 

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