パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

アルフォンス・ミュシャ ALPHONSE MUCHA

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初めてミュシャの絵を見たのは、すごーく昔、16歳の時だ。
ロンドンの街角を歩いているときに、ポスター屋さんに飾ってあるのを見て一目で惹かれてしまった。
 
「明けの明星」「北極星」「宵の明星」「月」の4つの星のシリーズは、どれも素晴らしくて4枚全部欲しかったのだが、単なるポスターでも、高校生のおこずかいではちょっと無理。何日か通って、さんざん迷った末に「月」だけを買った。
思春期にありがちの少し屈折した心理に、この神秘的な感じの、やや暗めの「月」が魅力的に写ったのかもしれない。
ずっと部屋に飾っていたのだが、何回もの引越にはずしては貼りを繰り返して、だいぶくたびれてしまった。いつどうして無くなってしまったのかもわからない。そういう気分から卒業したのだろう。
ミュシャは香りのテーマとしては格好の絵で、四季のシリーズや、宝石のシリーズなど習作を作ったものだ。「黄昏」と「暁」もいい。美しい絵は香りであり、音楽であり、文学でもある。
明るく華やかなミュシャは今でも好きだが、晩年の、チェコに帰ってからの作品のよさがわかるようになったのは年をとってからだ。
数年前、誕生日にこのミュシャの額をプレゼントしてもらった。アトリエの入り口にかけている、私のお気に入りだ。
 
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