パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

ケイオウザクラ 啓翁桜 Prunus 'Keiouzakura

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啓翁桜(けいおうざくら)は、お正月明けくらいから、たぶん、お花屋さんで一番最初に出回る桜ではないだろうか。
 
だんだんと日が長くなってきて、春らしい日差しに、こころなしか気持ちが明るくなってくる。
出先から急いで帰る道、思わずいつものお花屋さんで足を止める。
 
「アトリエの花も終わりかけているし・・・。」
2月はじめに買った時はつぼみが固すぎて、ついに開かずじまいだった啓翁桜(けいおうざくら)を、もう一回買うことにした。
 
「すみません、この桜、啓翁かしら?うん、ここんとこで枝を切ってください。これと、あっちにある黄緑色い丸いやつ、あ、アオモジ(青文字)ね、それから、これはコゴミ?ゼンマイですか。じゃあ3本くださいな」
お店の旦那さんが打てば響くように答えてくれるので、手際よく買うことができた。
 
紙でくるまれた花木を小脇に抱えてせわしなくアトリエへ。六本木の雑踏(ざっとう)を歩きながら、帰ったらあれもして、これもして、と作業やら用事が頭に浮かぶ。
 
 
 
とりあえず紙ごと、バケツにたっぷりの水に置いておく。
 
一段落ついたところでようやく枝を分けていると、だんだんと花に心が向き合い、本当にゆったりとした気分になってくる。黒々とした桜の幹の節くれだったさまと、薄紅色の少し繊細な花のコントラストが美しいと思う。
 
 
 
20180216ケイオウザクラ.jpg
 
背の高い花瓶には、さくらの太い枝とアオモジを投げ入れる。ボリュームがあって一気に華やかな雰囲気だ。
 
 
一方で、桜の大きな枝は途中で二つに切ったため、下の方につぼみのついた小さな枝がたくさんついている。活ければこのツボミたちは水没してしまうだろう。
 
そこでチョンチョンと小枝を落とし、それらはまた背丈にあう花器に活ける。一番短いさくらの枝はビーカーに挿した。
 
 
 
 
 
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「こんなに忙しいのに、なぜわざわざ手がかかることをするんだろう・・・。」と問わず語りに想う。水揚げし、水切りし、日々水を変え、そのつど向きを直し、場所を選らび。。。できるだけ寿命を全うさせたい。
 
しかし花は世話をされているとは思っているまい。
 
花は、花であることだけで価値があるのだから。
 
 
 
 
 
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