パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

春 プリマヴェーラ Primavera Botticelli

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春の木漏れ日が射す、若草の緑。
明るいところ、影のところ、白の花に、紫と桃色を散らして。

ヴィーナスのまわりの、きれいなピンクの花はなに?

人の手によって織られたかとみまごうタペストリー は、
まるでボッティチェリの「プリマヴェーラ・春」。

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あれ、これは...よく見たら桜じゃない?
はっとして頭上を見れば、そこには満開の八重桜が。

枝の上から下草のベッドに、散らさずに花の姿のまま、ふんわりと落としているのだ。

フローラを散らしたのは西風の神ゼピュロスのしわざ。

 

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八重桜は野暮ったいと思っていたけど、春の最後に知った八重の美しさ。

人里に並べて植えられたら人工的だけど、こんなみどり深い林の中に咲いていると、ことのほか野趣がある。

鄙(ひな)にもまれな美人といった風情だ。

 

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白い花はホソバオオアマナ。
紫の可愛い花はセリバヒエンソウ。

その上に八重のピンクが落ちてくるように、計画して植えたならすごいけど、たぶん不作為のなせる業(わざ)。

 

    ゼピュロスは春を呼ぶ強風を吹き立て、
    フローラは色とりどりの花々と芳香を周囲に満ちあふれさせる

                               -ルクレティウス

植物への祝福は、誰も見ていないところでそっと為されている。

こんなところに遭遇したら、もう神様の存在を疑うことはできないね。

 

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