パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

お香のかおりの龍脳菊 リュウノウギク chrysanthemum japonicum

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お香のかおりの龍脳菊 リュウノウギク chrysanthemum japonicum

 

野趣あふれる小輪の白菊、リュウノウギク(龍脳菊・竜脳菊)。
新宿御苑の脇に流れる「玉川上水分水道」の横に乱れるように咲いていた。

小さなせせらぎにふさわしい、可憐な姿にそっと顔を近づけて香りを見る。

 

 

春菊のような青臭い緑の香りを想像していたが、思いがけずウッディな香りがする。

ちょっと香木のような匂い・・・。
どこか、他からしてくるのか?と、周りを見たり、自分の洋服や手をクンクン嗅いでみるが、やっぱり菊から匂って来る。

 

意外な思いに写真を撮り、名札と香りをメモして、オフィスに帰って調べてみた。

 

リュウノウギク(龍脳菊)は、葉をもむと、東南アジアに分布するリュウノウジュ(龍脳樹)のような匂いがするので、その香りにちなんで名付けられたらしい。

リュウノウギクの花を引き寄せて香りを見たとき、葉が擦れて香ってきたものだろうか。
葉の裏には、香り物質を分泌する腺があるそうだ。

 

本には「リュウノウギク(龍脳菊)はショウノウ(樟脳)のような、鼻にツンとくる刺激臭」と書いてあるが、私が感じたのはもっとウッディでむしろ香木のような・・・しいて言えばカシュメランの混ざった少しスパイシーな甘さである。

 

リュウノウジュ(龍・竜脳樹)についても説明を加えると、この樹木からは芳香性の樹脂が析出(滲み出てきたものが結晶化)してくる。

昔、先生に聞いた記憶を頼りに書いてみるが、龍脳樹の木の股からは六角の白い結晶が生えてくるそうである。

 

天然龍脳はボルネオール(墨を磨ったときに香ってくるような匂い)を多く含む。
防虫効果があるので、昔は箪笥の着物の間に紙に包んだ龍脳を入れたそうである。
高価なものなので、樟脳(しょうのう・カンファー)や合成品で代用されるようになった。

 

また楊貴妃(ようきひ)はこの龍脳を好み、身に着けていたと言い伝えられている。
玄宗皇帝(げんそうこうてい)は寵妃である楊貴妃が死んだ後、この香りをそばにおいて妃を偲んだという。

リュウノウジュ(龍・竜脳樹)のこの物語を聞いたとき、神秘の霧の中に見え隠れする背の高い樹を想像したものである。

 

同じ名前を持つ菊、リュウノウギクは詩情のある野の花である。

絶滅危惧種として、石川県のレッドデータブックに載せられている。

 

 

リュウノウギク 学名:Chrysanthemum japonicum

 

 

 

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