パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

アオキ  Aucuba japonica

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アオキは昔の家の裏庭にも植えられており、花よりも冬の実のほうがよく目立ち、記憶にある。
 
長いこと、ありふれた植物と思い心にとめるほどでもなかったが、新宿御苑を見るべき花もなく所在なげにただ歩いている冬の朝、ツヤのある葉の奥にひと群れ、ふた群れとなる赤い実が目についた。
 
卵型の、2センチほどの実は枝の先に房となって下がっている。花は春。目立たない花なので気がついたことがなかった。
 
 
 
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「アオキか・・・。昭和なイメージ」
 
「平成」ももう残りわずかというのに、まだ「昭和」を引きずっているのだろうか。のんびりとした世の中のせいなのか、自分の年齢のせいなのか、当時は一日がとてもゆっくりと過ぎていたと思う。
 
子供の頃住んでいた畳の座敷で、兄たちにまとわりついていたあの頃が、走馬灯のように思い出される。
 
のいちご、桑の実、やまもも。
外で遊んでいると、実(み)を見れば摘んで口に入れてみる子供たちもいたが、私は食べるものには慎重なほうだったので、野生の実を食べたことはほとんどないと思う。アオキは苦いらしい。
 
 
 
 
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寒いので温室に避難する。こちらはアラビアコーヒーの木。コーヒーの実は茎がなく、枝の上に直接ついている。
 
「珈琲の花はジャスミン調の香り」と、そう書いたものを読んだことがあるが、ジャスミンのあのこっくりとした甘さは少なく、思いのほかすっきりとしたシトラス、グリーン、フローラルな香りだった。
 
冬には赤がことのほか目に暖かい。
しかし、暦の上ではもうとっくに春がきている。いよいよ、パステルの光が待ち遠しいことである。
 
 
 
 
 
 
 
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