パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

花のサンクチュアリ 2 パリ・バノー

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花のサンクチュアリ 2 パリ・バノー

その公園は幾何学的な花壇の集合ではなく、田舎家の庭でくつろぐような、心休まるような野の風情がある。

 

ハーブガーデンはカジュアルに植えてあり、果樹が豊かさを表している。ブッシュ(灌木の茂み)があり、あずまや風の管理事務所は景観に溶け込む。

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子供たちが歓声を上げる広い芝生の広場では、ガーデナーが水まきをしている。みぎから、ひだり、ひだりからみぎ。

ぶどうの木の日陰の中から見たその光景はまばゆくて、昼間見る夢のように思えた。


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木漏れ日が長く続くぶどうのアーチは憩いの場所だ。パリ7区の役所の人たち(たぶん)も、サンドイッチを持ってランチに来たりして、のんびりしている。

 

ベンチに腰かけて訪れる人々を眺めていると、お母さんと子供連れも、お年寄りも、ビジネスマンも
多くの人が立ち寄って香りを吸うバラがある。何本ものバラが咲いているのに、なぜかその木の、その一輪を嗅ぐのである。

近づいて端から順に、全部確かめてみた。たしかに、その花が一番いい匂い。みんな、毎日来て知っているのかな。でも、外で咲いている花を嗅ぐ男の人は、日本では珍しい。メルヘンの人みたいに思われてしまうから?そんなことがフランスでは自然に見えるから不思議。

 

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気がつくともう扉の閉まる時間。今日は夕方まで過ごしてしまった。ホテルまでの道、また一人テクテク歩く。初夏の空はずっと薄い青紫のまま、建物がならぶ通りも灰紫に沈み、いつまでも真っ暗にはならない。たくさんの窓があって、あかりがポツポツと灯っていく。そのひとつひとつに暮らしがある。

 

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ソワールドパリ。「パリの夜」という古い名香は、こんな詩情から生まれたんだなーとひとりごちた。

写真上から:①バノーのバラ ②あずまや  ③葡萄のアーチ ④パリの長い夕暮れ  ⑤Jardin catherine la boure 

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