パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

2005年パリ  Parisの思い出

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今年、2013年の7月のフランスは暑かった。
パリに来てこんな暑さが続くと、あの8年前の夏の日が思い出される。


 

所用があり、8年前の2005年は4回もパリに来た。アメリカにも1回行ったので都合5回長距離を飛んだ。

ヨーロッパなんてたまに来るからいいのであって、こんなに来るとなると12時間も飛行機に乗るのが嫌になった。
成田に入ると憂鬱になったし、とても緊張する用事だったから。

この2005年もすごく暑い夏だった。

 

その日、クリニャンクールの蚤の市に行って午後1時ころ帰ってきたら、ホテルのある地域一帯が停電になっている。
それまでエアコンなんかなかったパリであったが、2003年の猛暑で15000人が死んで、翌年は商店を中心に、ポータブルのクーラーをみな一斉に買ったのだった。

その年も7月初めに急に暑くなり、地域の電力容量が足りなくてダウンしたらしい。
それはいいのだが、このホテルでは導入したばかりの最新式磁気式カードキーが停電でまったく使えない。
つまり、部屋に入れないのだ。誰一人。

いつ復旧するかの見通しは一切立っていない。
マスターキーもないなんて?信じられない。
ホテル側も想定外とて困惑しているが・・。
フランス人だから?「僕たちの責任じゃありません~」みたいな様子。

 

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ホテルに戻ってきたこのときは、蚤の市に行くとて身をやつしてのひどい恰好。
しかもその日の夜はジョルジュサンクにてディナーの予定。

『シャワーだって浴びたいのに・・・。』

しばらくホテル一階のカフェで部屋に入れるのを待つが、5時の約束の時間が迫り、やむなくそのままの服装で待ち合わせの場所に行く。

 

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ジョルジュサンクのサロン・ド・テにて打ち合わせをしたのち、バンケットルームを見て、その後お食事の予定だったが、あまりにこの服装ではまずいし、部屋のことも気になるので相手に事情を話して滞在中のホテルへ戻る。

 

当時宿泊したホテルの場所はサンジェルマン。
立派なサロンのあるいいホテルだ。

しかしそこは道が極めて狭く入り組んでおり、大型の電気工事車が入れない模様である。
勝手なパリのドライバーたちは道を譲ろうともしない。

道の向かいはイタリア料理店。その隣は映画館、停電では開店できない。
所在なくシェフが戸口に立って工事の行方を眺めている。

この季節、10時近くまで空は明るいのだが、
ついに日は暮れてカフェも真っ暗になったころ、ようやく明かりがついた。

 

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やれやれ部屋には入れたけど、もしこれが帰国当日だったらどうするのだろう?
スーツケースは部屋の中、そう思うとぞっとする一日だった。

きっと今は多少インフラは整備されているだろうし、こんな時のためのバックアップもあるに違いない。


 

しかし暑いと言っても30度を超えたくらい、クーラーさえあればもっとしのぎやすいのだが・・・。
今回滞在した2区~3区のあたりは、まだあまりクーラーを入れている店はなく、店の中のほうがむしろ暑い。
あっという間に来ているものが汗でぐっしょりになる。
汗かいて、乾いて、また汗かいて・・・超デトックスできたみたい。

アパートで完備されているところはほとんどないのではないか。
8年たってこの普及率、やっぱりそれほど必要ないのかもしれない。

滞在中はパリも結構蒸し暑いと思ったけど、日本に帰ってきたら比ではない。


 

 

今年の6月は気温20度にも満たない寒い初夏だったという。
用意していったジャケットはついに着ることはなかった。

 

 

 

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