パルファン サトリの香り紀行

調香師が写真でつづる photo essay

色と香りの表現-1

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香りの表現手段

香りを色で表現して言う。

 

香りは目に見えない。それに、香りを表現する専門の言葉はとても少ない。そこで、人に伝えたり、話し合うためには借り物の言葉を使って香りを説明する。
香りを色でたとえることはポピュラーな方法のひとつだ。匂いを嗅ぐとだれでも、なんとなく色を思い浮かべることがあると思う。
 
例えば、レモンの香りを嗅ぐと、黄色いイメージが湧く。それは、レモンの色を記憶していることもあるだろう。バラの匂いはピンクと思う人が多いようだ。でも、香料の名前を教えないで匂いをみると、また違った色を感じたりもする。白や、グリーンと言う人もいる。
だれもがはっきりと色が浮かび、近い色に意見がまとまる香料と、人によって思い浮かべる色にばらつきのある香料がある。それは、個人の記憶の差も関係する。
ただ、調香師が色と香りを評価すると、それほど大きくぶれることはない。現物が手元になくて、仮に電話やメールでも、「明るいグリーンの、やや黄を帯びた透明感のある鋭い香り」といえば、だいたいどんな香料かは絞られてくる。それは訓練と経験による。

 

色を香りで表現する。

表現するときだけでなく、香りを作るときにも、色のイメージは重要だ。
白い花の香りを作るには、赤を連想させる香料は邪魔になるので処方には使いにくい。たくさんの色合いを混ぜすぎると、絵の具のように汚く濁ってしまう。
三原色を色相環にした図で言うと、緑から黄色、朱、赤、紫あたりまでは比較的作りやすい。しかし、青、とりわけ紺のような濃いブルーを作るのは難しい。漆黒も。
ブランドの香水で、ブルーやブラックの名前のついた香水は、パッケージのイメージで刷りこまれていることが多く、ブラインド(目隠し)で嗅いだらおそらく違う色が出てくると思う。
でも、白やピンクのイメージの香水は、比較的作りやすいのでずれが少ない。
 

色と香りの感性

矛盾するようだが、「この香りはこの色に感じなくてはならない」という決まりはなくて、自分が感じるように思ったらいい。それはいい悪いとかではなくて、感性だから。職業的に知らなければならないことと、ユーザーとして楽しむということは、全然べつのことだ。
レモン系の香りを嗅いで、黄色やグリーンや白をイメージすることが一般的であるという知識を踏まえて、でも自分には紫を感じる、と思うのは自由なのである。

 

色と香りに注目して、香水を試したり作ってみると、きっと楽しいと思う。
 
 
 

 

 

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